良いモノなのに売れないのはなぜか?

良い製品を開発した。技術にも自信がある。しかし、思うように売上が伸びない。

B2Bビジネスでは、このような課題に直面する企業は少なくありません。
製品が売れないとき、機能の追加や価格の見直しを考えがちです。しかし、問題は製品そのものではなく、市場へのアプローチや販売の仕組みにあるのかもしれません。

製品を市場に浸透させ、売上につなげるためには、次のような観点から事業全体を見直す必要があります。

1. 顧客課題の理解: 顧客は何に困っており、何を解決したいのか
2. ターゲット市場の選定: 誰に売るべきなのか
3. ポジショニング: 競合と何が違い、なぜ選ばれるのか
4. 製品価値の訴求: 顧客にどのような価値を伝えるのか
5. 販売戦略の設計: どの営業手法で顧客に届けるのか
6. マーケティング: どのように認知を獲得し、商談・受注につなげるのか
7. 実行・検証・改善: 結果を測定し、何を改善していくのか

これらは独立した要素ではなく、すべてが相互につながっています。どれか一つだけを改善しても、期待した成果につながらない場合があります。

本コラムでは、筆者がこれまで約30年にわたり、様々な企業で事業開発、市場開拓、GTM(Go-to-Market)に携わってきた経験を踏まえ、特に重要な3つのポイント「ターゲット市場の選定」「ポジショニング」「販売戦略の設計」について解説します。

ターゲット顧客が明確になっていない

「多くの企業に使ってほしい」という考え方は自然です。
しかし、対象を広げすぎると、誰に向けて何を伝えるべきかが曖昧になります。

同じ製品でも、業界、企業規模、担当部門、抱えている課題によって、導入する理由は異なります。まずは、自社製品の価値を最も強く感じる顧客層を特定することが重要です。

例えば、ある設備保全向けソフトウェアを販売する場合、製造業、プラント事業者、インフラ管理会社など、複数の市場が考えられます。しかし、それぞれで業務プロセス、導入条件、購買決定者、販売チャネルが異なる可能性があります。

限られた営業リソースで、すべての市場を同時に攻略するのは容易ではありません。
そこで重要になるのが、最初に攻略すべき市場を選ぶことです。

・ 課題の深刻さ: 顧客は、その問題を解決する必要性を強く感じているか
・ 市場の規模: 十分な顧客数や売上機会が存在するか
・ 導入の可能性: 予算、技術、運用面で導入可能性があるか
・ 競争環境: 既存の解決策に対して、明確な優位性を持てるか
・ 顧客へのアクセス: 自社の営業活動や販売パートナーを通じて接点を作れるか

市場規模が大きいことだけが、最優先市場を選ぶ基準ではありません。顧客の課題が明確で、実際にアプローチでき、かつ自社の強みも活かせる市場であることが重要です。

まずは対象市場を絞り込み、そこで実績と顧客理解を蓄積する。
その後、隣接する市場へ展開することも有効な戦略です。

ポジショニングが明確になっていない

ターゲットが決まっても、顧客に選ばれる理由が明確でなければ、受注にはつながりません。

「高性能」「高品質」「使いやすい」「最新技術を搭載している」。これらは製品の特長ですが、それだけで顧客が購入を決めるとは限りません。

顧客が知りたいのは、自社の課題をどう解決できるのか、そして他の選択肢ではなく、なぜこの製品を選ぶべきなのかということです。

例えば、ある製品に優れた技術があったとしても、競合製品との違いや導入によって得られる効果が伝わらなければ、顧客からは同じような製品の一つとして見られてしまいます。

ポジショニングを考える際には、次の点を整理します。
① 顧客:誰に選ばれたいのか
特定の業界、企業規模、部門、役職、業務など、対象顧客を具体化します。

② 課題:何を解決するのか
顧客が強く感じている問題や、既存の方法では十分に解決できていない課題を明確にします。

③ 差別化:競合と何が違うのか
機能、精度、使いやすさ、導入期間、サポート、価格、専門性などを比較し、自社が優位性を発揮できるポイントを見極めます。

④ 価値:なぜ自社製品を選ぶべきなのか
差別化のポイントを、顧客が評価できる具体的なメリットにつなげます。

ここで注意したいのは、自社が優れていると思う点と、顧客が購入理由として評価する点は、必ずしも一致しないということです。そのため、顧客へのヒアリングや商談での反応、競合製品との比較などを通じて、仮説を検証する必要があります。

ポジショニングは、どの顧客を狙い、どの価値を訴求し、どの競争領域で勝負するかという、事業戦略上の選択です。

『すべての顧客に選ばれようとするのではなく、特定の顧客にとって最も魅力的な選択肢になる。』
これが、限られたリソースで市場を開拓するための重要な考え方です。

質の高い販売戦略が設計されていない

ターゲットを選び、製品が選ばれる理由を明確にしても、それだけでは売上は生まれません。

顧客にどうやって製品を知ってもらい、興味を持ってもらうか。そしてだれが商談を設定して、クロージングするか。など、初手から契約までの道筋を設定する必要があります。それが販売戦略です。

例えば、Webサイトに製品情報を掲載し、プレスリリースを配信したとしても、それだけで問い合わせが増えるとは限りません。ターゲット顧客がその情報に接触したとしても、その後のアクションまで繋がるとは限らないからです。

製品や市場に応じて、適切な販売方法を設計する必要があります。
・ 直販: 顧客と直接対話し、課題を把握しながら提案する
・ 代理店・パートナー販売: 既存の顧客基盤や販売網を活用する
・ Webマーケティング: 検索やコンテンツを通じて見込み顧客を獲得する
・ 展示会・業界イベント: ターゲット顧客との接点をつくる
・ 既存顧客への展開: 導入実績をもとに、追加導入や紹介につなげる

すべてを同時に実施する必要はありません。ターゲット顧客に届きやすく、自社の人員や予算で継続できる方法から始めることが大切です。

また、販売戦略は計画をつくって終わりではありません。市場機会の分析、ターゲット顧客の優先順位設定、問い合わせ数、商談化率、受注率、受注までの期間などを確認し、成果が出ていない場合は原因を分析して改善します。

まとめ

良い製品なのに売れない。その原因は、必ずしも製品の性能や価格にあるとは限りません。

まず見直したいのは、次の3つです。
・ ターゲット市場の選定: 誰に売るのか
・ ポジショニング: なぜ自社製品が選ばれるのか
・ 販売戦略の設計: だれが、どのように顧客に売るのか

この3つがつながることで、製品の強みを適切な顧客に伝え、販売活動を成果につなげやすくなります。

新しい製品や技術を開発することは、事業成長の重要な一歩です。しかし、それを市場に届け、顧客に選ばれ、継続的な売上を生み出す仕組みをつくることも同じくらい重要です。

「製品には自信があるが、思うように売れない」とお考えの企業様は、ぜひ一度、自社のターゲット、ポジショニング、販売戦略を見直してみてください。

後記:
これまでの事業開発や市場開拓の経験から申し上げると、戦略を描くことと、それを実際の販売活動に落とし込み、結果が出るまで微改善をし続けることは別の仕事です。

戦略と実行をつなげる仕組みがなければ、良い計画も成果には結びつきません。
そのティップスについてはまた別のコラムで触れたいと思います。

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